カカオ豆の香気成分分析と香気寄与成分探索

2020年2月28日 技術レポート

チョコレートの基本的な香りは,生カカオ豆の発酵工程で醸成されるが,ロースト香を含めたチョコレートを想起させる特有の香りは焙炒工程でも生成される。本研究では加熱前後におけるカカオ豆の香りに着目し,SA-SBSE法(Solvent Assisted-Stir Bar Sorptive Extraction)で成分分析ならびに香気寄与成分の探索を試みた。

生カカオ豆には,2-octen-5-olideや2-decen-5-olideの甘い香り,heptanoic acidのsourな香り,p-cresolのスモーク,クレヨンの香りが寄与していた。加熱したカカオ豆には2-ethyl-3,6-dimethylpyrazine,2,3-diethyl-5-methylpyrzine,5H-5-methyl-6,7-dihydrocyclopentapyrazineなどのロースト香, 4-hydroxy-2,5-dimethyl-3(2H)-furanoneやγ-nonalactoneなどの甘い香り,4-vinylguaiacolのスモークの香りが特有な成分として寄与していた。加熱前後においてピラジン類をはじめ,sourな香り,甘い香りに寄与する成分が異なっており,チョコレートの香りを調香する上で重要な知見が得られた。

(日本食品科学工学会 第66回大会 堀内)

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